フランス留学のためにミニマリストになりたい女

アラサーでフランス音楽留学中の女が奮闘する記録。

緊張とイップス

先日、とある人から一緒に歌う予定の人がイップスになってしまったようだった、という話を聞きました。

イップスとは精神的な原因などにより体が思うように動かせなくなってしまうことだそうです。

主にスポーツの分野で使われることが多いようですが、同じく全身を使う歌も同様のことが起こりえます。

有名なところではラグフェアのメインボーカル土屋さんがイップスになったことを公表していました。

 

これは私見ですが、イップスのような症状に陥りやすいのはどうも男性テノールに多いように感じます。

実際のところは比べられませんが、側から見ていてテノールは最も身体的な負荷、そして精神的なプレッシャーのかかる声種だと思います。

女声の頭声で高音を出すのとは違い、実声で高音をだすのはやはりかなり難易度の高い事なはずです。

 

それゆえに、テノールの人は発声法マニアのようになりやすい。

歌を表現する、ということよりもいかに発声するかを本当にマニアックに突き詰めたがる人が結構いるのです。

しかし、得てして発声マニア的方向に進む人はイップスになりやすいように感じます。

あまりにも突き詰めすぎて、それが自分を追い込んでしまうような・・・。

 

しかし思い返せば、自分自身も相当な上がり症で、ほぼイップスに近いのは?というくらい本番や人前で歌うのが私は絶望的にだめでした。

(よく歌続けてると思う笑)

練習では全く問題ないのに、人前に出ると突然喉に絡みつくような感覚になって声がひっかかってしまうのです。

大学受験の時もこんな調子でしたが、ありとあらゆる手段を使って、入試の時は最悪の状態は免れたかな・・・という感じでなんとか音楽大学に入ったのでした。

 

大学に入ってからもなかなかその癖は治りませんでしたが、大学を卒業して数年経ったくらいからようやくまともに人前で歌いだせるようになった気がします。

それは一体なんでなのか・・・。

 

発声方法自体がすこしずつ改善していったのも一つ。

緊張して体が硬くなってしまうことが歌うにあたって最も良くないことだと気づいてから、本番前に体を温めたりストレッチすることで物理的にもかなり改善しました。

 

そして歌うことへの向き合い方の変化。

それまでは試験に受からないといけない、人より評価されないといけない、勝たないと意味がない、という思考が根強く、人前で歌うことは恐怖と隣り合わせでした。

それが大学という常に評価される場から離れたこと。

自分はどんな歌をやっていきたいのか、どんな音楽家になりたいか考えていくうちに、周りに勝つ必要はどこにもないことに気づいたこと。

とにかく自分にしか歌えない歌を歌って、聴いた人に何かを感じてもらうために歌いたい、という気持ちになってからは、歌うことへの向き合い方が全く変わりました。

 

それと同時に練習通りには絶対本番はいかない。

本番で70~80%の出来になることを考慮して、いかに100%の状態を練習で高めておくか、という考え方になって随分と変わりました。

あと、ジンクスやゲン担ぎを私は極力しないようにしています。

ゲン担ぎはあっという間に、あれをしなきゃという強迫になるし、あれをやっていないからうまくいかない!という呪いに変身してしまうからです。

 

これをすれば治る!とか、これをやれば間違いない!という鉄則が全く存在しない、通じないのが歌の世界です。

私なんて永遠に回り道のまま終わってしまいそうな人間ですが、こうして振り返ると少しは成長していると思えるので、それでよしとしたい今日この頃です。